医師への不信感から転院を考える
兄が入院して2週間近く経った頃でした。
仕事の話しもあり兄の病室に行くと兄が言いました。
『なあ、毎日点滴ばかりでこれからどんな治療をするのか先生に聞いてきてくれ。』
私は兄がもう治療法が無い末期の胃がんだと知っているだけに戸惑いながらも兄の担当医がいる、ナースステーションに行って先生に事の経緯を話しました。
弟さんから胃がんの告知を伝えて欲しい
先生は少し困った様子で私に言いました。
『弟さんからお兄さんに胃がんの告知を伝えて欲しい。』と。
私は唖然としてしまいました。
『先生、何を言ってるんですか?!今さら兄に胃がんだなんて言えるわけないですよ!先生、本当に何か他に治療方法は無いのですか?』
先生は医学書のような書籍をペラペラとめくりながら言いました。
『そうだねえ。そう言われてももうお兄さんに有効な治療方法は無いのですよ。』
兄の質問に何とか答えてあげたいとわざわざ先生に相談に行ったにもかかわらずこの一言で終わってしまいました。
主治医への不信感が高まる
この一件で私は主治医への不信感が一気に高まってしまいました。
それはそうと、このままでは兄の病室に戻ることも出来ず、待合室に腰掛け、兄にどう話したら良いのかをしばらく考えていました。
『こんな事になるのだったら、最初の診断で先生から直接兄に胃がんの告知をしてくれれば良かったのに。』とこの時何度も思いました。
最初の段階で先生から胃がんの告知を兄にしてもらっていたら、私も義理姉も嘘をついたりこんなに悩んだりする事も無かったからです。
結局この時は苦し紛れに兄にはこんな事を伝えました。
『今の治療を続けてみて治れば退院出来るし、もし治らなければまた違う治療を行います。』と。
兄の分かってくれたようで納得してくれました。
転院を考える
私の苦し紛れの説明に兄が理解を示してくれたことに私はホッとしながらも、先生への不信感をつのらせながら家路につきました。
帰りの車中、私はふと思いつきました。
兄が十二指腸潰瘍の治療で薬を処方してくれている、かかり付けの個人病院の先生に訳を話して、別の病院を紹介してもらおうと考えました。
上手く別の病院に転院が出来れば、何か他に治療法があるかも知れないと言う私なりの期待もありました。
私は早速、翌日にでもかかりつけの先生に相談に行ってみることにしました。