私は早速翌日、兄が入院している病院へ行きました。
病室に入ると兄は点滴を受けていました。
『具合はどう?』
『ちっとも良くならないよ。』
兄の発する声が何か弱々しく、私が見ても兄の身体はだいぶ痩せてきていました。
『一芝居』で兄に転院を納得してもらう
私は昨日から考えていた『一芝居』を始めました。
『実はこの前、「兄が十二指腸潰瘍で入院しているけどなかなか良くならない」って兄貴の行きつけの病院へ相談に言ってきたんだ。
そうしたら先生が「私が知っている病院があるからそこで治療をしてもらってみては?」と言ってくれたんだよ。
せっかくだし、良くなるかも知れないからそっちの病院に移らないか?』
兄に胃がんの事を悟られないよう、注意しながら話しをしました。
兄はこの病院の先生方をあまり良く思っていない上、十二指腸潰瘍もなかなか良くならない焦りも感じていたのか、『分かった。病院を変えよう。』と言ってくれました。
『良かった。じゃあ、担当医には「明日仕事で兄に聞きたいことがある」と言って俺が外泊許可をもらってくるから。』
兄にそう伝えると私は早速担当医に外泊許可をもらいに行きました。
『そうですか。分かりました。明日の朝ですね。』
無事に(?)外泊許可をもらい、その事を兄に伝え、『明日の朝、迎えに来るから。』とその日は一旦病院を出ました。
再度、先生にお願いに行く
兄の病院を出た後、私は真っ直ぐ家には帰らず、そのまま兄の行きつけの病院へ向かい、先生に兄が転院を納得してくれた事を伝え、再度お願いに行きました。
『兄がくれぐれも宜しくと言っていました。そして明日、兄を連れて病院へ行こうと思います。』
『そうですか、明日ですね。私からも院長に話しておきます。』
『本当にいろいろとありがとうございました。』
私は先生に感謝を伝え、家に帰りました。
兄の持ち物も整理、これで転院の準備が完了
私は家に変えるとすぐ、いつも兄とコーヒーを飲む場所に座り、ひとりコーヒーを飲みました。
ホッと一息ついた後、義理姉に電話をし、兄が病院を移ることを了解してくれたので、明日の朝から外泊許可を取って来た事、そして明日の朝、早速兄を迎えに行ってそのまま転院先の病院へ行く予定である事を伝えました。
妻とおふくろにも伝えました。
その夜、義姉から兄が入院している病院へ行って先に身の回りの整理をしてきたと電話がありました。
これで、兄の転院の準備が全て完了しました。
私はこれで病院を変えればきっと兄は何か良い治療が受けられるだろうと思っていました。