翌朝の転院当日、私は一階に降り工場のシャッターを開け、いつもの場所に座りコーヒーを飲みながら義姉が来るのを待っていました。
途中、おふくろが来て、『今日は、(兄を)頼むよ!』と私に言いました。
おふくろはおふくろなりに期待と不安があったのだと思います。
それからしばらくして、義姉が到着しました。
義姉は車から降りるなり、『ちょっとお義母さんに話しをして来ます。』と言って、おふくろの家に入って行きました。
私はこれから先、兄の病状を考えると義姉もおふくろも不安があると思うが、今はとにかくこれから行く病院に賭けようと思っていました。
『それではお義母さん、行って来ます。』義姉がおふくろの家から出て来ました。
私と義姉は車に乗り、兄が入院している病院へと向かいました。
『病院が変われば何か良い治療が受けられるかも知れないね。』
『私もそう思いたい。』
車の中ではそんな会話をしていました。
兄を転院先の病院へ
兄の病室へ到着すると兄はすぐに外出出来るよう、既にパジャマの上に上着を着ていました。
『それじゃ行こう。兄貴、1階まで歩ける?』
『大丈夫。歩けるよ。』
しかし、エレベーターに向かって歩いている兄は、壁などに手をつきながら歩いていて、明らかに体力が弱っているように見えました。
「早く何とかしなければ。」そう強く思いました。
何とか病院の玄関まで着くと、私は車を玄関に横付けし、兄と義姉を乗せて出発しました。
『兄貴、このまま病院へ向かう?それともちょっと工場とおふくろの家に寄ってから行く?』
『このまま病院へ行こう。』
結局そのまま転院先の病院へ向かったのですが、車で1時間ちょっとの道のり、車の中で兄と何を話したのかほとんど覚えていません。
病院到着後、そのまま検査
しばらくして病院に到着。
この病院はそこそこ大きな病院で、兄が駐車場から病院内まで自力で歩いて行くのは困難だと思った私は、病院で車椅子を借り、病院内に向かいました。
病院内では多くの人が行き交っていました。
病院内での手続きを一通り済ませ、待合室でしばらく待っていると看護師さんに呼ばれました。
『これから検査をしますので。』と、兄が座る車椅子を押して行き、私と義姉はそのまま外科の待合室で待つことになりました。
私と義姉は兄の検査結果を考えると期待と不安で落ち着く事が出来ませんでした。
ただただ兄が検査を終えて戻って来るのを待つばかりでした。